小規模宅地等の特例は有難い存在

平成27年から相続税の基礎控除が下がり、一説では東京都内ではほぼ2世帯に1世帯の割合で
相続税の申告が必要になると言われていますが、実際に相続税を納税することになる割合は
20%弱位と言われています。
その大きな要因となるのが「小規模宅地等の特例」です。
本特例は、亡くなった方(被相続人)が生前に、居住用として使っていたり、或いは店舗など
事業用として使っていた宅地等(宅地のほか、借地権も含まれるため、「宅地等」となって
います。)があり、かつ、その後その宅地等を被相続人の親族が継続して同様の用途に使用
しているなど一定の要件を満たす場合、その宅地等の評価額が最大で80%も減額される、
という制度です。

例えば、被相続人が生前に自宅として使っていた宅地があって、この特例の適用前の評価額が
5,000万円(面積は200㎡)だったとします。仮に同居していた子がこれを取得して、そのまま
居住用として使用し続けると、5,000万円×80%=4,000万円も評価が減額され、課税の対象と
なるのは、5,000万円-4,000万円=1,000万円となります。

もし、この被相続人の自宅の宅地以外の財産が3,000万円あったとして、相続税の基礎控除が
現時点で8,000万円だとしますと、この小規模宅地等の特例が適用できなくても、遺産の総額は
5,000万円+3,000万円=8,000万円となり、基礎控除以下になるので相続税は発生しません。
一方、平成27年以後は改正により基礎控除が現行の6割の4,800万円になりますが、本特例を
適用できれば、遺産の総額は1,000万円+3,000万円=4,000万円となるので、やはり相続税が
発生しないことになります。

この特例を適用するための要件は

このように、この特例は適用できると節税の効果がとても高いのですが、そもそも適用できる
かどうか、いろいろと要件がある点に注意が必要です。
具体的には、まずは次のような要件が必要となります。
 ① 被相続人が相続開始直前に、その宅地等を居住用、または事業用として使用していること
 ② 事業用の場合にはその宅地等の上に何らかの工作物(建物・構築物など)があること
 ③ その宅地等の取得者が決まっていること
 ④ その宅地等が後述する「特定事業用宅地等」、「特定居住用宅地等」、
  「特定同族会社事業用宅地等」または「貸付事業用宅地等」のいずれかに該当するものであること
 ⑤ 結果として納税額がでなくても、必ず申告書を提出し、かつ、一定の書類を添付すること

なお、事業用として使っている場合とは、具体的には店舗や工場のほか、賃貸マンションや
アパート、或いは時間極や月極の駐車場として他人に賃貸している場合なども含まれます。

よって、例えば、次のような宅地等は本特例の適用ができません。
 ① 相続人間で遺産分割ができていない宅地等
 ② 宅地等が上の③のいずれにも該当しない場合
 ③ 駐車場であるが更地のもの
 ④ 別荘や別宅として利用している場合

特定事業用宅地等とかって何?

先ほどの要件の中でちょっと難しいのが、『「特定事業用宅地等」、「特定居住用宅地等」、
「特定同族会社事業用宅地等」または「貸付事業用宅地等」のいずれかに該当』、という部分です。
というのも、一言で言えば、これらは「被相続人が居住用や事業用に使っていた宅地で、死亡後も
継続使用されているもの」なんですが、実はそんなに簡単な話ではないのです。

例えば、被相続人の遺族が被相続人の妻と、既に他家に嫁いでいる長女の2人だったとします。
妻は被相続人と同居していましたが、長女は夫と子の3人家族で、夫が買った分譲マンション
に住んでいたとします。
この場合で、被相続人の自宅を妻が相続する場合には「特定居住用宅地等」となるのですが、
例えば、妻と長女で共有で相続したり、長女が1人で相続すると、その長女が取得した部分については
「特定居住用宅地等」にはなりません。
また、仮に妻が相続しても、その後妻が死亡した場合、唯一の相続人である長女がその宅地を
相続したとしても「特定居住用宅地等」にはなりません。
このように、実はこれらの特例が適用できる宅地等になるためにはそれぞれ細かい要件があり、
その要件を安易に考えていると、実際に相続が起こったものの適用できない、という場合も
意外とあるのです。

ちょっと長くなりましたので、今回はここまでです。
これらの特例の適用がある宅地等の詳細は、今後順次ご説明していきます。